「テレワーク中に出社」4割 経理財務の在宅勤務阻む紙の壁
新型コロナウイルス感染の急拡大で政府は4月7日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく
「緊急事態宣言」を表明する。首都圏などの企業の活動は、8日から5月上旬までは在宅勤務が中心となる。
しかし、2、3月にテレワークを経験した上場企業などの経理・財務部門幹部の4割は在宅勤務では業務が
完結せず途中出社していたことが明らかになった。営業とは違い、比較的在宅勤務に馴染みやすいとされる
財務関連でもペーパーレス化が進まず、完全なテレワーク態勢は難しいようだ。各企業とも社内デジタル化の
遅れを補いつつ、今回の「緊急事態」に臨むことになりそうだ。
■紙のデジタル化、テレワーク実施の36%
日本CFO協会(東京・千代田)は3月18日から4月3日まで、上場企業の財務最高責任者ら経理・財務幹部577人に
オンライン上で「新型コロナウイルスによる経理財務業務への影響に関する調査」を実施した。従業員規模は
5万人以上が11%、5万人未満5000人以上が22%など500人以上の企業が71%。回答者の役職は役員16%、
部長24%、課長29%と課長以上で69%を占めた。新型コロナの感染拡大が始まった2、3月には約7割が
テレワーク勤務を実施したという。しかしその中で41%が「テレワーク実施中に出社する必要が発生と回答した」と
日本CFO協会の谷口宏・専務理事は説明する。
出社の理由は「請求書や押印手続き、印刷など紙データの処理」が1位を占めた。さらに「会議への参加」
「銀行への対応」などが続いたという。テレワーク態勢に入った企業は、社内システムのアクセスやパソコンの持ち帰り、
オンライン会議のツール整備などの状況を判断して実施を決めたという。それでも「紙の書類のデジタル化に
対応できている企業は36%にとどまる」と谷口氏。
財務関連はテレワークに最も適した業務のひとつとみなされていた。営業担当者のように、頻繁に外部の取引先との
商談を交わす機会は少ない。しかし企業社会に根付いた紙の文化のしぶとさが普及への障壁として浮き彫りになった。
■「デジタル化対応できず」でテレワーク断念77%
一方テレワークを実施しなかった残り3割の企業では、理由として「請求書や契約書など紙の書類がデジタル化に
対応できていない」が77%(複数回答)を占めた。続いて「テレワークを想定した社内ルールや試験を経験していない」は66%、
「銀行や監査法人、税理士らとのリモート対応ができない」が59%と続いたという。
取引先から紙の請求書などが送られれば対応せざるを得ないという答えが目立ったという。
同協会の中田清穂・主任研究委員は「押印のデジタル化が必要と感じていても、具体的にどの程度のコスト削減に
つながるか経営幹部に説明できないとするケースも少なくない」と分析する。その一方で、自然災害など緊急時における
テレワーク態勢の必要性を96%が感じており、特に69%は「非常に必要」と回答している。平常時でもテレワークの
導入・促進についても75%が「やるべき」としている。
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO5771861006042020000000